毎年春に行われるMaple Field Threadのコラボレーション・セッション。今年は東京・猿楽町のヒルサイドテラスに8名の職人が集まった。織物、陶芸、漆器、草木染め、刺繍、竹細工、紙漉き、金工と、それぞれが全く異なる素材と技術を持つ作り手たちだ。

このセッションの目的は単純だ。異なる分野のプロフェッショナルが同じ空間で3日間を過ごすと、何が生まれるか。そのプロセスを記録し、今後の工芸の可能性を探ること。

工芸コミュニティサークル

初日 — 言語の壁を越えて

織物職人の田中悠希と陶芸家の林修は、出会って3時間後には既に互いの作業台の前で議論を始めていた。「土と繊維って、根本的に違う素材だけど、形を作るという意味では同じプロセスがある」と林は言い、田中は「糸の組み合わせで質感が変わるのは、釉薬の重ね方に似ている」と応じた。

工芸の専門家同士が初めて出会うと、まず自分たちの共通言語を探す作業から始まる。素材は違っても、自然への向き合い方、手の記憶、時間をかけることの意味——そこには深い共鳴があった。

田中悠希

田中 悠希(織物作家)

「異分野のプロと話すと、自分が当たり前だと思っていた方法が、実は独自の選択だったと気づく。その発見が一番刺激的です。」

二日目 — 素材の交換実験

二日目は、各自の素材を交換してみるという実験が行われた。竹細工の職人・佐野が草木染めの素材を使って編み目に色を入れ、草木染め家の中村が竹の繊維を布地に取り入れることを試みた。

結果は予想外のものが多かった。「失敗作」と思われたものが、他の職人の目には傑作に見えることもあった。素材の「正しい使い方」という固定観念が、異分野の視点によって解体されていく過程は、見ていて興奮した。

「自分の分野では失敗とされるものが、別の文脈では最高のテクスチャーになる。工芸には、まだ無限の組み合わせがある。」

三日目 — 共同作品の誕生

最終日、8名は自発的に一つの共同作品の制作を始めた。竹で骨格を作り、手織りの布を張り、草木染めで色をつけ、漆で仕上げる——誰一人の指示もなく、自然に役割分担が決まっていった。

完成した作品は、工芸の分類では何と呼べばいいのかわからないものだった。それは、異なる技術が静かに対話した証として、現在Maple Field Threadのスタジオに展示されている。

来年のコラボレーション・セッションへの参加は、お問い合わせページよりご応募ください。